月刊不動産流通1994.4より

特集
ネットワークを生かした業務の強化
NETWORK----------@国際経済不動産事業研究会(青山の会)

多彩な業種の会員が
タイムリーな話題を議論。
複眼思考づくりを・・・


国際経済不動産事情研究会幹事
(株)大京LAND事業本部開発推進部長(注:当時)
廣田 潔

海外・金融要因の重要性認識が会の発端

今回、原稿の依頼を受け、そのテーマがネットワークを生かした業務の強化ということで、直接それに応じ得るか否かはともかく、青山の会の存在とその内容を紹介できる機会が与えられたことを素直に喜びたい。
 私自身も青山の会以外に各種のネットワークに参加し、それぞれ大きな示唆と刺激を得ており、それ自体はかけがえのない楽しみでもある。
 しかしながら、他のネットワーク会員には申しわけないが、当青山の会は抜きんでてエキサイティングである。なぜにエキサイティングであるかは後述するとして、本会の由来を先ずは述べさせていただきたい。
 記憶は定かではないが、本会のそもそもの発足は89年の暮れに遡る。不動産経営研究所長の林道三郎氏、日本開発構想研究所副理事長の水田喜一朗氏、当時三井不動産レッツ事業部の佐藤一雄氏(現不動産シンジケーション協議会専務理事)、それに当時住宅・都市整備公団都市再開発部の小生が一夕集い、悲憤*慨に至ったのが発端である。私はともかくいい年をした大人、しかも、斯界においてそれぞれ勇名を馳せている各氏がそもそもなぜ慨嘆に耐えない事態に立ち至ったのか、これもまた酔いも手伝ってではあるが、憂慮すべき事態ではある。
 その所以は、一言でいえば世に満ち満ちている「常識」のウソに耐えられないということであった。不動産市場、都市計画、土地・住宅問題等に関する巷間、特にメディアにおいて喧伝されていた「常識」がわれわれの「常識」とはなはだ違っていたからである。
 当時は、絶好調の不動産市場にやや陰りが見え始めたとはいえ、いまだ「バブル経済」というキーワードも生まれず、従ってその崩壊というシナリオもなかった。ただ、四名に共通する認識は、激動はなはだしい日本の不動産を取り巻く環境の中で、従来の状況と異なった因子として重視すべきは海外要因および金融要因の二つであり、このことの重要性を行政をはじめ経済ジャーナリズムも軽視しすぎているのではないかとのことであった。
 すなわち、国際不動産市場は海外不動産市場と緊密にリンクしており、投資家にとっては多様な市場が選択可能な時代に至ったし、供給側にとってもそれぞれの市場で競争力のある商品づくりをしなければならないということである。
 また、かっての過剰流動性が不動産価格の急騰という形で市場に大きな影響を与えた状況に合わせて、膨大なマネー経済が国境を瞬時にクリアしてしまうという金融の国際化が市場を翻弄しているのではないかとの認識である。 
 このような問題意識(ちょっと大袈裟か、本当は好奇心に過ぎないが・・・)を踏まえて、各自、好学の士を多数募り、様々な角度から不動産市場に起きていること、あるいは起きるであろうことを解明し、ウオッチングしていく、ひいてはある種の警鐘を鳴らせるような研究会をつくろうというのが発端である。研究会は、一家言のある実務経験豊富な専門家を数多く集め、自由に発言し、あくまで本音ベースで議論を交わせる場にしていこうということである。


幅広く多様な視点でテーマを設定

 研究会の正式名称は、「国際経済不動産事情研究会」とした。しかし、ご好意で事務局をお引き受けいただく第一法規出版(株)が港区青山に所在することから通称を「青山の会」とした。
 好学の士は、四名が日頃から付き合いのある方で、不動産業界はむろんのこと、主に海外不動産事業の経験者、不動産金融の専門家を中心に魅力ある情報を持った多彩な人材に声を掛けることでメンバーの選出をした。
 その結果、現在まで多少の出入りはあったが、次のような職種、あるいは業種に勤務する方々に入会していただくことができ、正会員は今のところ28名を数える。
 @不動産デベロッパー(国内外)、不動産カウンセラー(国内外)、不動産鑑定士、不動産業界団体
 A公認会計士、税理士、渉外弁護士、経営コンサルタント、金融コンサルタント
 B開発コンサルタント、ゼネコン
 C日銀、政府系銀、長信銀、信託銀(外銀含む)、生保、シンクタンク
 D政治家(国、都、区)、新聞記者
 E宝石輸入商
 なお、発起人の4名は会の世話役ということで幹事となり、林氏が代表、水田氏が副代表の任に就いている。(
注:現在の幹事等は会則を参照のこと)
 このほかに、折々の月例会のテーマごとに参加するアドホックな会員が10名ほどいる。
 会の運営は、月に1回のペースで月例会を開き、折々のタイムリーな話題を提供していただける外部講師または会員講師をお招きし、ご講演いただいた後に質疑応答するという形式で行っている。現在までに、多彩なテーマをもとに、開催回数は38回を数えている。
 いささか当初の意図とは異なったテーマ設定も多々あるが、できるだけ幅広く、多様な視点から自由にという意図は一貫しているつもりではある。思い起こしてみると当会で自負できることは、昨今話題となっている金融機関の不良債権問題やそれに対する公的資金の導入問題などは、すでに91年に本会で取り上げられ、アメリカのRTCやイギリスのライフボート作戦などがいち早く紹介され、議論の俎上に乗っていることである。このほか世に先駆けたテーマを取り上げることが多い。
 月例会のテーマおよび講師は、会員の希望も募りながら佐藤、廣田の両幹事が企画し、講師の招請をしている。テーマが決まれば、会員、アドホック会員、過去ご講演いただいて外部講師に開催通知を出す。月例会は少ないときに10数名、多いときで20数名の出席をみている。
 また、新会員の入会は随時おこなっており、会員の紹介さえあれば、いつでも入会可能であり門戸を常に広く解放している。


継続こそネットワーキングの基本

 ここで月例会の実際の進行を紹介しよう。いつも、午後の6時30分に開会し、7時までの間に食事をしながら(注:現在は6時頃開会し、食事はありません)、出席会員の近況報告と講師の紹介があり、その後、8時ないし8時30分頃までご講演をいただき、9時までが質疑応答というのが通例である。質疑については丁々発止と議論が飛び交い時間オーバー気味となるのが常である。問題は、その後である。ほぼ、9時を回った頃から座を近所のパブレストランに移し、杯を重ねつつ、講師を囲んで、希望する会員のみで、本当の本音ベースで議論を再開するわけである。裃を脱いで執拗を極めながら講師の本音を探り、また、裏情報をぶつけ激しく会員同士も意見を戦わせることとなる。これである。これこそ青山の会の真骨頂でありエキサイティングする所以である。日頃から弁舌鋭く、声の大きい某氏などは、弁舌冴えわたり鬼神もこれを避くる勢いで、一同たじたじとするのみである。一家言どころではない論客が打ち揃い**諤々と梁山泊もかくやと思われるほどの迫力である。この場で得られる情報にはいつもながら得心することや目から鱗(何枚もある)が落ちる思いがする。そのわりに翌朝よく覚えていないのはアルコールのしからめるところか。
 月例会の模様は、出席会員が記録に取り、欠席者ともども会員に後日配布される。
 本会の会費であるが、会員は年会費2万円と月例会の都度食事代として千円を集めており、アドホック会員は、参加の都度3千円をいただいている。
(注:現在の会費は会則を参照のこと)
 「ネットワークを生かした業務の強化」という趣旨がビジネス情報の収集やビジネスチャンスの拡大ということにウエートがあるとすれば、直接本稿がそれに応え得たとはいえないであろう。あるいはすでに本会の会員間でビジネスの成果が生まれているかもしれないし、それはそれで結構なことではある。要は、自分の勤務先あるいは業種、業態と少し距離をおいて、多方面からものを見つめ直していく機会を持つことがネットワーキングの良さではなかろうか。その結果、多彩な人脈が育まれ、その輪が多方面に波及して決して一人では、あるいは座しては得られぬものの見方(複眼思考)ができれば大きな成果といえよう。
 そのためには、まずは継続していくことがネットワーキングの何よりの基本と思われる。その点でいえば本会は非常に恵まれているといえる。それは、黒子として本会に会議室の提供をしていただき、開催通知、出欠の確認、会計処理などの一切の事務局機能を第一法規出版(株)にお世話していただいているからである。この場を借りて改めてお礼申し上げたい。
(注:現在の事務局機能は、(株)住宅新報社と(株)サタスインテグレーションにお世話していただいております)